親の介護が進むと、自宅で介護を行うのか、老人ホームに入居してもらうのか、検討しなくてはいけなくなるタイミングがきます。どちらを選択したとしても、それぞれメリット・デメリットがあり正解がないため、介護する側としては悩ましいところではないでしょうか。
または、老人ホームへ入居を考えている方は、公的年金以外にどのくらいの費用を準備しておくべきか、知っておきたいところですね。
今回は、その中でも老人ホームに入居した場合の費用にフォーカスを当て、どのくらいの費用が必要なのか、どのように準備すればよいのかについて解説します。
chatこの記事でわかること
ポイント1
老人ホームの費用について、種類別に特徴を理解しよう
介護施設は公的施設と民間施設があり、入居できる条件・利用できるサービス・費用等も全て違うので、その種類をわかりやすく説明していきます。まず、将来像から入りたい施設を考えて必要な費用を見積もってみましょう。
ポイント2
年金で足りない介護費用は、年金増・資産運用・家計見直し・介護保険加入で賄う
公的年金だけでは介護費用が足りない時には、現在の年金を増やす方法や、株/不動産や貯蓄型の保険などで資産運用する方法があります。ただし、デメリットもあり、逆に損をしてしまう事もあるので、仕組みをしっかりと理解することが大切です。また、老後の為の生活費の見直しも有効です。独自で家計簿をつけたり、プロに相談したりするのもおすすめです。
このように介護費用を補填する方法はいくつかありますが、それぞれのメリット・デメリットを理解し、早めに対策を始めましょう。

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老人ホームの種類と費用の目安
公的施設
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは「特養」とも呼ばれ、費用が安く比較的重症度が高くても入居できる場合が多いのが特徴です。特養の入居条件は、原則65歳以上、要介護3以上となります。施設規模は大きく、医療機器はほとんどないですが、介護スタッフと看護師もいるため、雰囲気は病院に近いでしょう。
費用は入会金等がなく、月額およそ6万~15万円と介護施設の中でも比較的安いです。そのため人気があり、申込みが殺到していることから入居待ちの方も多いです。また、規模が大きいため、入居者の多い施設なので、一人一人に細やかなケアをおこなうことが難しく、業務的に感じる方もいるかもしれません。
その他の公的施設
ケアハウスは、60歳以上の要介護度1以上から入居できます。介護老人保健施設(老健)、介護療養型保健施設(新型老健)、介護療養型医療施設(介護療養病床)、介護医療院も、要介護度1以上(原則65歳以上)から入居でき、介護のほかに医療処置とリハビリをするサービスもあります。
民間施設
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
グループホームの入居条件は、原則65歳以上、認知症と診断され、要支援2もしくは要介護1以上と認定された場合となります。入居者は少人数制となり、入居者と介護スタッフがレクリエーションや簡単な家事を一緒にするなど、距離が近くアットホームな雰囲気です。
しかし、ほとんどの施設に看護師など医療に特化したスタッフが居ない状況です。民間施設となるので、費用も高めで、相場は月額およそ15万円~20万円程度。さらに入会金が必要となる施設も少なくありません(約20万以上から数百万円程度)。また、介護度が一定のレベルまであがると退去しなければならないことがあります。
その他の民間施設
ほかにも、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、介護付き有料老人ホーム、地域優良賃貸住宅高齢者型、住宅型有料老人ホーム、シニア向け分譲マンション、高齢者向けシェアハウスなどがあります。これらは60歳以上で自立された方から入居できます。
それぞれの施設によって、介護の有無や見守り、緊急時連絡など、提供されるサービスが変わってきますので、費用とサービス内容をきちんと確認することが大切です。
公的施設と民間施設は、それぞれメリット・デメリットがあります。加えて、看取りの対応ができるかどうかも重要なポイントとなるので、事前によく確認しましょう。
老人ホームにかかる費用
老人ホームに入居した場合の費用についてイメージしやすいように、一例をあげてみたいと思います。
老人ホーム探しから入居後までの流れと費用の例
- 認知症が進み要介護度3と診断、87歳からグループホームの部屋で過ごす生活に変更。
かかる費用:入会金30万円と約17万円/月 - 1年後、介護状態が進み車椅子や医療費、おむつ代等が増える
かかる費用:約20万円/月に増額 - 89歳の時に要介護度4になり入退院が増え、医療器具や看護師がいる特養を進められる。1年後特養から入居できる旨の連絡をもらう。90歳時に本契約。
かかる費用:入会金無料(預金2万、退去時返却)車椅子無料、おむつ代等含め約12万円/月。 - 91歳まで生涯過ごす。
かかった介護費用
<30万円+17万円×12ヶ月+20万円×24ヶ月+12万円×24ヶ月>=1,002万円
この一例の場合、介護施設で過ごす5年間で、総額1,002万円かかることになります。なお、生命保険文化センター「2018年度生命保険に関する全国実態調査」では、介護費用の平均初期費用69万円、月々の平均費用7.8万円、平均介護期間4年7ヶ月と発表しています。
この計算で考えると、4年7ヶ月で総額約509万円必要ということになります。上記の例は実態調査よりも倍かかる計算になります。介護の個人差は大きいため、判断材料のひとつとしてお考え下さい。そのほか、入院費用や娯楽趣味などは介護費用とは別に必要となりますので、その点もご注意ください。
ここまでの内容で、介護が必要になった時の、ご自身が求める将来像や必要となるおおよその費用をイメージすることはできましたでしょうか。ではその費用を年金や貯蓄でまかなえるのかが気になるところですね。
介護費用は、年金と貯蓄からまかなえる?
老後の平均収入はいくら?<受給年金と60代の平均貯蓄額>
日本年金機構が公表している金額は、厚生年金220,724 円(※夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)、国民年金65,141円(老齢基礎年金(満額))となります。厚生労働省が行った「2019年 国民生活基礎調査の概況」によると、60歳~69歳の1世帯当たりの平均貯蓄額は1,461万円となっています。
出典:日本年金機構・厚生労働省 「2019年 国民生活基礎調査の概況」
その他の公的給付
介護保険は、40歳以上になると加入しなければなりません。支給の対象者となるのは、65歳以上の要介護度認定を受けた方と、40~64歳で特定の病気にかかっている方に限られます。
介護保険の支給限度基準額は要介護度によって決められています。自己負担割合は原則1割ですが、所得によって2割または3割になります。支給限度額を超えた場合は、すべて自己負担になります。なお、世帯の収入によっては、高額介護サービス制度が適用になり、差額が払い戻しされる場合もあります。
|
1ヵ月あたりの支給限度額 |
自己負担額(1割負担) |
要支援1 |
50,320円 |
5,032円 |
要支援2 |
105,310円 |
10,531円 |
要介護1 |
167,650円 |
16,765円 |
要介護2 |
197,050円 |
19,705円 |
要介護3 |
270,480円 |
27,048円 |
要介護4 |
309,380円 |
30,938円 |
要介護5 |
362,170円 |
36,217円 |
ゆとりある老後生活にはいくら必要?
生活保険文化センター「平成28年度生活保障に関する調査」(夫婦二人で生活する場合)によると、老後の最低日常生活費は、民間企業勤めの方は約22万円/月、自営業の方は約23万円/月となり、ゆとりある老後生活費は約35万円/月という結果になっています。
現在の標準的な額では、ぎりぎりの生活しかできません。ゆとりあるセカンドライフを過ごすために、平均貯蓄額1,461万円を切り崩すことを仮定した場合、貯蓄は約9年4ヶ月でなくなります。
日本人の平均寿命は、男性81歳、女性87歳となっているので、年金だけでは、介護費用を考えるどころか日々の生活費用が厳しい状態になります。では、老人ホーム費用と十分な老後資金を用意するにはどのような方法があるか、みていきましょう。
老後資金を用意する方法
生活費の見直し
まずは、生活費の総額を明らかにするために、家計簿をつけてみましょう。そして、節約できる部分を探してみてください。
たとえば、電気・ガスの自由化や携帯大手3社は料金改定が行われているので、料金を見直したらより安くできる可能性もあります。ほかにも、シニア用カードの使用や、免許返納によって車を売却し維持費がなくなった分、シニアのタクシー割引をうまく活用する方法もあります。
また家計簿を付けることで、「先月に比べて今月は娯楽にお金をかけすぎているから、来月は1万円おさえよう」といったプランを立てることができます。世の中ではキャッシュレス化が進み、ポイントの価値が、生活費などに大きな影響を与えています。まだ現金派の方は、無理のない範囲でキャッシュレス化を検討してみましょう。
医療費が家族分含めて年間10万円を超えた場合は、控除の対象となります。忘れずに確定申告をしましょう。ちなみに、ドラックストアなどで購入した医薬品も対象となります。この機会に、生活費の見直しをして家計をスリム化しておくと、老後の生活費も少なくできます。
年金を増やす
繰り下げ受給
年金の繰下げ受給は、年金の受取開始時期を通常の65歳から66歳~70歳に伸ばすことで、受け取る年金額を8.4%~42%増やせる制度です。たとえば65歳時点での年金受給額が10万円の場合、繰り下げ受給によって70歳から受け取るようにすると、年金受給額が14万2,000円にまで増えます。
付加年金
さらに自営業の方は、月400円上乗せする付加年金や国民年金基金に加入することで年金をさらに増やせます。なお、国民年金基金の掛金が全額所得控除となり、受け取る際は公的年金等控除が適用されます。
特別支給老齢厚生年金
生まれた日が、男性:昭和36年4月1日以前、女性:昭和41年4月1日以前の方は、65歳前から特別支給老齢厚生年金を受給ることができます。これは、年金の繰上げ受給とは別物です。5年以上経つと受け取れなくなるので注意しましょう。
民間の介護保険への加入
公的年金や貯蓄だけでは介護費用への備えが不安な場合は、民間の介護保険への加入も検討してみましょう。
ある保険会社HPで公開されているシミュレーション機能によってシミュレーションをおこなってみると、40歳の男性が年間保険料98,934円を65歳まで支払った場合、総支払い保険料約247万円に対し保険金500万円が受け取れる試算となりました。500万円の保険金は、要介護度2~5に認定されたば場合もしくは、保険会社所定の重度要介護状態となった場合に受け取ることができます。
契約者の年齢や払込期間、受け取る保険金の設定によって、支払う保険料は変わりますが、介護費用を貯蓄以外でも準備できるのは安心ですね。貯蓄が難しそうなときは、介護費用を賄う検討材料の一つとして考えるといいでしょう。ただし、介護度の状態により支払いが制限される点は注意が必要です。
早めの資産運用
貯蓄や保険以外にも、資産運用によって老後資金を準備する方法があります。
つみたてNISA
つみたてNISAは、2018年1月からスタートした、長期・積立・分散投資を支援するための制度です。投資対象となる商品は、金融庁の基準をクリアした投資信託のみとなっています。
投資額年間40万円を上限として、最長20年間の間に受け取った分配金や売却益を非課税で運用することができ、資金の引き出しも任意のタイミングで行えます。一定額を積み立てて運用する「ドルコスト平均法」は、価格変動による影響を抑える効果も期待できます。
iDeCo
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、60歳未満の「自営業者等」「厚生年金保険の被保険者」「専業主婦等」が加入でき、ご自身で運用する金融商品(定期預金や投資信託など)を決めて運用します。
掛金は全額所得控除となり、運用益は非課税と税金対策としても活用でき、60歳以降に年金もしくは一時金として受け取ることになります。しかし、資産運用は元本割れのリスクもありますので、十分ご注意ください。
まとめ
安心した老後生活を送るには、理想とする老後の将来像を早くから考えることがとても重要です。老人ホームに入居する場合も、思い描いている理想の老後生活を、家族や支えてくれる方に事前に伝えておくことで、安心して暮らせるホームを見つける助けになるでしょう。
費用についても、入居する施設や介護にかかる費用を見越して準備しておくことが、介護するご家族の生活を守ることに繋がります。
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