養老保険の保険金にかかる税金は、受け取り方や支払われる保険金の種類などによって変わります。本記事では、養老保険の保険金にかかる税金の種類や計算方法を、わかりやすく解説します。
※この記事は2020年9月現在までに公表されている情報に基づいて作成されたものです。 将来予告なく変更されることがあります。
chatこの記事でわかること
ポイント1
養老保険の満期保険金に課されるのは「所得税・住民税」または「贈与税」
- 契約者と満期保険金受取人が同一人物の場合:所得税・住民税
- 契約者と満期保険金受取人が別人の場合:贈与税
ポイント2
養老保険の死亡保険金に課されるのは「相続税」、「所得税・住民税」または「贈与税」
- 契約者と被保険者が同一人物で、死亡保険金受取人が別人(相続人)の場合:相続税
- 契約者と死亡保険金受取人が同一人物で、被保険者のみが別人の場合:所得税・住民税
- 契約者、被保険者、死亡保険金受取人が全員別人の場合:贈与税
※被保険者とは保険の対象となる人

お悩みならプロに無料相談!
当サイト紹介のファイナンシャルプランナーはお金のプロです。老後資金の悩みをスムーズに解決することをお約束します。
※プロフェッショナルは当サイトからご紹介するファイナンシャルプランナーです。
養老保険とは?
保険期間中に死亡・高度障害となった場合は死亡保険金を、生存して満期を迎えた場合は満期保険金が支払われる保険です。死亡保険金と満期保険金は、同じ金額となります。 例えば、保険期間(保障される期間)が10年、保険金額が1,000万円の養老保険に加入したとしましょう。
保険期間中に死亡した場合は、1,000万円の死亡保険金が支払われ、満期まで生存した場合は、1,000万円の満期保険金が支払われる仕組みです。2020年8月現在、円建てと外貨建ての養老保険が販売されています。
- 円建て養老保険
保険料を円のまま運用する保険(保険金・解約返戻金なども円で受取り) - 外貨建て養老保険
保険料を米ドルや豪ドルなどの外貨に両替して運用する保険(保険金・解約返戻金なども外貨で受取り)
近年の円建て養老保険は、低金利の影響を受けて、
満期保険金額 < 払込保険料総額
となるケースがほとんどです。
外貨建て養老保険は、保険料を日本円よりも相対的に金利の高いアメリカやオーストラリアのドルに両替して運用するため、円建てよりも高い利回りが期待できます。
ただし、外貨建て養老保険は、保険料・保険金額・解約返戻金額が外貨建ての金額で決まっているため、円換算する際に為替損益が発生します。保険料を支払ったときの為替相場と、満期保険金や解約返戻金を受け取るときの為替相場の差には注意が必要です。利回りの高さだけではなく、仕組みやリスクも理解した上で商品をえらびましょう。
満期保険金の受け取りには税金がかかる?
養老保険で満期保険金を受け取った場合、契約者と満期保険金受取人がそれぞれ誰であったかによって、課税される税金の種類が異なります。
契約者と受取人が同一人物である場合は所得税・住民税がかかる
契約者と満期保険金受取人が同一人物の場合、受け取った満期保険金は一時所得として所得税と住民税の課税対象となります。しかし、課税対象となるのは、満期保険金全額ではなく、以下の計算式で求められた一時所得の半分の金額です。
一時所得=(満期保険金-払込保険料総額)-特別控除(50万円)
一時所得の課税対象額=一時所得の金額×1/2
例えば、満期保険金額が500万円で、ほかに一時所得がなく、払込保険料総額が400万円である場合、一時所得の金額と所得税・住民税の課税対象となる金額は、以下の通りです。
一時所得
=(500万円-400万円)-特別控除(50万円)
=50万円
所得税・住民税の課税対象となる金額
=50万円 × 1/2
=25万円
よって上記のケースでは、25万円が給与所得や事業所得などの他の所得の金額と合計され、所定の税率がかけられ、所得税や住民税の金額が計算されます。満期保険金を受け取ることで税金がどれだけ増えるのか、具体例で見てみましょう。所得税の税率は、課税所得金額によって変わります。
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
また、2037年(令和19年)までは、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)が課されます。
例:満期保険金以外の「課税所得金額」が320万円だった場合
満期保険金あり | 満期保険金なし | |
---|---|---|
課税所得金額 | 3,450,000円 | 3,200,000円 |
所得税額 | 3,450,000円×20%-427,500円 =262,500円 |
3,200,000円×10%-97,500円 =222,500円 |
復興特別所得税 | 262,500円×2.1% =5,500円 (100円未満切り捨て) |
222,500円×2.1% =4,600円 (100円未満切り捨て) |
住民税 | 3,450,000円×10% =345,000円 |
3,200,000円×10% =320,000円 |
所得税+ 復興特別所得+ 住民税 |
262,500円+5,500円+345,000円 =613,000円 |
222,500円+4,600円 +320,000円 =547,100円 |
よって、満期保険金の受け取りによって増える税金の合計額は、65,900円(=613,000円-547,100円)です。 ただし以下のようなケースでは、受け取った満期保険金(解約返戻金)と払込保険料総額の差益に対して源泉分離課税が適用され、20.315%の所得税及び住民税が源泉徴収されます。
- 保険期間等が5年以下の一時払養老保険で満期保険金を受け取った場合
- 一時払養老保険を5年以内に解約して解約返戻金を受け取った場合
仮に満期保険金を受け取った人の課税所得金額が、195万円超330万円以下であった場合、所得税の税率は10%です。そのため満期保険金に課される所得税の金額は、以下の通りとなります。
源泉徴収される税額
=(150万円-90万円)×20.315%=121,890円
契約者と受取人が別々の人物である場合は贈与税がかかる
養老保険の契約者と満期保険金受取人が別人の場合、受け取った満期保険金は以下で計算された金額が、贈与税の課税対象です。
贈与税の課税対象金額
=(受け取った満期保険金額+満期保険金以外に年間で贈与された金額)-基礎控除(110万円)
※年間とは暦年(1月1日〜12月31日)
例えば、満期保険金額が500万円、満期保険金以外に年間で贈与された金額が50万円であった場合、贈与税の課税対象金額は以下の通りです。
贈与税の課税対象金額
=500万円+50万円-110万円
=440万円
仮に契約者が夫で受取人が妻であった場合、満期保険金は一般贈与となります。以下の速算表で求められる贈与税を納める必要があります。
贈与税の税率【一般贈与財産用(一般税率)】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
※上記は、「特例贈与財産用」に該当しない場合の速算表です。直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与は【特例贈与財産用】となり、異なった税率が適用されます。
上記の速算表にしたがって贈与税を計算すると、以下の通りです。
贈与税額=440万円×30%-65万円 =67万円
計算すると、67万円の贈与税が発生する結果となりました。 所得税や住民税の課税対象になる場合と違って、課税対象額の計算時には、払込保険料が差し引かれません。よって満期保険金に贈与税が課せられる場合、所得税や住民税と比較して税負担が高額になる可能性があるのです。
死亡保険金の受け取りには税金はいくらかかる?
養老保険の死亡保険金に課される税金は、以下のように契約形態によって3種類に分かれています。
養老保険の死亡保険金に課される税金の種類と契約形態の例
契約者 | 被保険者 | 死亡保険金受取人 | 課される税金 |
---|---|---|---|
夫 | 夫 | 妻 | 相続税 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税・住民税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
所得税・住民税と贈与税の計算方法は、満期保険金を受けとった場合と同じです。ここでは、死亡保険金に相続税がかかる場合の納税額を解説します。
相続税がかかる場合
養老保険の契約者と被保険者が同一人物で、死亡保険金受取人が別人の場合、相続税の課税対象となります。
死亡保険金の非課税金額
=500万円×(法定相続人の数)
例えば、法定相続人が妻と子ども1人の合計2人であった場合、死亡保険金の非課税限度額は、1,000万円(500万円×2人)です。よって、養老保険の死亡保険金額が1,000万円以下である場合、死亡保険金に相続税はかかりません。
ただし養老保険以外の保険契約からも死亡保険金を受け取った場合、合計額から死亡保険金の非課税限度額を差し引きます。仮に法定相続人が3人、養老保険の死亡保険金額が500万円、定期保険の死亡保険金額が2,000万円であった場合、相続税の課税対象となる額は以下の通りです。
相続税が課される額
=(500万円+2,000万円)-500万円×3人
=1,000万円
また相続税には、基礎控除があります。非課税限度額を差し引いたあとの死亡保険金額と、他の相続財産との合計が、基礎控除の範囲内であれば相続税は課されません。基礎控除額の計算方法は以下の通りです。
基礎控除額=3,000万円+600万円×(法定相続人の数)
仮に法定相続人の数が3人の場合、死亡保険金額から非課税限度額を差し引いた額と他の相続財産の合計が4,800万円(3,000万円+600万円×3人)以下の場合、相続税はかかりません。
養老保険の保険料は控除の対象になる?
養老保険で払い込んだ保険料は、生命保険料控除の対象となります。生命保険料控除とは、毎年1月1日〜12月末までに支払った保険料の金額に応じた一定額が、その年の契約者の所得から控除される制度です。 生命保険料控除の控除枠は、以下3つの枠に分かれており、養老保険で支払った保険料は一般保険料控除の対象となります。
生命保険料控除の区分
対象の保険 | |
---|---|
一般生命保険料控除 | 終身保険・学資保険・変額保険・養老保険・変額個人年金保険 など |
介護医療保険料控除 | 医療保険・がん保険・介護保険 |
個人年金保険料控除 | 所定の条件を満たした個人年金保険 |
※変額個人年金は、一般生命保険料控除の対象となります。
一般生命保険料控除の年間払込保険料に応じた控除額は、契約した日によって異なります。
契約日が2012年(平成24年)1月1日以後の場合
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
20,000円以下 | 払込保険料全額 | 12,000円以下 | 払込保険料全額 |
20,000円超 | (払込保険料×1/2) | 12,000円超 | (払込保険料×1/2) |
40,000円以下 | +10,000円 | 32,000円以下 | +6,000円 |
40,000円超 | (払込保険料×1/4) | 32,000円超 | (払込保険料×1/4) |
80,000円以下 | +20,000円 | 56,000円以下 | +14,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円 | 56,000円超 | 一律28,000円 |
契約日が2011年(平成23年)12月31日以前の場合
所得税 | 住民税 | ||
---|---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
25,000円以下 | 払込保険料全額 | 15,000円以下 | 払込保険料全額 |
25,000円超 | (払込保険料×1/2) | 15,000円超 | (払込保険料×1/2) |
50,000円以下 | +12,500円 | 40,000円以下 | +7,500円 |
50,000円超 | (払込保険料×1/4) | 40,000円超 | (払込保険料×1/4) |
100,000円以下 | +25,000円 | 70,000円以下 | +17,500円 |
100,000円超 | 一律50,000円 | 70,000円超 | 一律35,000円 |
仮に、2013年に加入した養老保険の保険料が毎月2万円(年間24万円)であった場合、所得税の計算時に4万円、住民税の計算時に2.8万円が、それぞれ所得から控除されます。ただし、すでに一般生命保険料控除の対象である学資保険や終身保険に加入しており、保険料を年間で8万円以上支払っている場合、養老保険に追加で加入しても節税効果は得られません。
なお、外貨建て養老保険に加入して支払った保険料も、生命保険料控除の対象です。控除の対象となる保険料は、外貨で保険料を支払った日における為替レートで円に換算した金額となります。ただし、特約等により保険料を円で払った場合は、円で払った金額が対象です。
生命保険料控除を受けるために必要な手続き
生命保険料控除を受けるためには、年末調整や確定申告で所定の手続きが必要です。 会社員の場合は、勤務先の年末調整時に「給与所得者の保険料控除申告書」を記入し、事前に保険会社から送付された「生命保険料控除証明書」を添付して担当部署に提出します。ただし申告方法は勤務先によって異なるため、担当部署に確認が必要です。
自営業者の場合は、保険料を支払った翌年の確定申告時に、確定申告書の生命保険料控除の欄に記入し、生命保険料控除証明書を添付して申告します。確定申告をe-Taxで行う場合、生命保険料控除証明書の添付は不要ですが、原則5年間は保管しなければなりません。 また、年末調整時に生命保険料控除を申告し忘れた場合は、確定申告をすることで、払いすぎた所得税を還付してもらえます。
養老保険を解約する際の注意点
養老保険は終身保険や学資保険などと同じ貯蓄型の保険であるため、契約途中で解約すると解約返戻金を受け取れます。しかし解約返戻金は、支払った保険料の合計金額を下回り、元本割れとなるケースも少なくありません。 また養老保険を一度解約すると、同じ条件での加入が難しくなります。
再加入時には、養老保険に加入した当初よりも年齢を重ねているため、ほとんどの場合で保険料は高くなります。また健康状態によっては、養老保険に再加入できないこともあります。
払済保険や延長(定期)保険への変更を検討する
保険料の支払いが厳しい場合は、養老保険の払済保険や延長(定期)保険に変更することができます。
- 払済保険
保険料の支払いを停止して、その時の解約返戻金をもとに保険期間は変えずに、保険金額を下げた養老保険に変更する方法。 - 延長(定期)保険
保険料の支払いを停止し、そのときの解約返戻金で同じ保険金額の定期保険に変更する方法。保険期間は、短くなることがあります。
払済保険や延長(定期)保険に変更すると、保険料の払込を停止しつつ、保障を維持できます。また変更後も一定期間(1〜3年)以内に、所定の条件を満たすと「復旧」によって、もとの保険契約に戻せる場合があるのです。
ただし、払済保険や延長(定期)保険に変更すると、付加されている特約は原則として解約となります。また、解約返戻金が少ない場合や養老保険加入時に特別条件*が付帯されている場合は、払済保険や延長(定期)保険に変更できないことがあります。
*特別条件とは、被保険者の健康状態に応じて「保険料の割増」や「保険金の削減」などの条件が付くこと
まとめ:養老保険の保険金にかかる税金は、保険金の種類や契約形態によって高額になる場合がある
養老保険の死亡保険金や満期保険金に課される税金の種類や、税額の計算方法は複雑です。そのため、ご自身だけで契約を決めてしまうと、保険金を受け取るときに高額な税負担が発生するかもしれません。 保険に加入した後に不明な点が出てきたり、保険金を受け取るときの不安を減らしたい場合、当サイトから無料でファイナンシャルプランナーに相談できます。ぜひご活用ください。

お悩みならプロに無料相談!
当サイト紹介のファイナンシャルプランナーはお金のプロです。老後資金の悩みをスムーズに解決することをお約束します。
※プロフェッショナルは当サイトからご紹介するファイナンシャルプランナーです。