お孫さんに教育資金を出す場合、贈与の仕方によっては高額な贈与税が課せられます。本記事では、教育資金を贈与するときに高額な贈与税の支払いを回避する方法を解説しますので、ぜひご一読ください。
※この記事は2020年9月現在までに公表されている情報に基づいて作成されたものです。 将来予告なく変更されることがあります。
chatこの記事でわかること
ポイント1
教育資金の贈与には、贈与税がかからないケースと、かかるケースがある
(贈与税が課されないケース)
- 親や祖父母から教育費に充てるために贈与された場合
- 教育資金一括贈与の特例制度を利用する場合、最大で1,500万円まで非課税
(贈与税が課されるケース)
- 将来必要になると思われる教育資金を前もって贈与された場合
- 教育資金一括贈与の総額が1,500万円を超えてしまう場合や、
教育資金の範囲に該当しない場合 など
ポイント2
学資保険や終身保険を活用して教育資金を贈与する方法がある
贈与税の非課税枠を活用して、学資保険や終身保険に加入すると、現金で贈与した場合とは異なったメリットがあります。

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実は教育資金はもともと非課税(しかし一括で渡すことができない)
教育資金を贈与する場合、もともと贈与税はかかりません。しかし、将来的な活用のため、教育資金を前もって一括贈与すると贈与税の課税対象となります。その場合、贈与税の非課税枠(基礎控除)を活用して贈与をおこなえば、税負担をある程度抑えることができます。
教育資金を必要なタイミングで贈与すると非課税
扶養義務者が、教育資金が必要と認められるたびに贈与する場合、贈与税はかかりません。非課税となる贈与額に法的な制限はありませんが、常識的に考えて生活費や教育費として必要と認められる金額とされています。
ただし非課税となるのは、「小学校に入学するのでランドセルを買ってあげた」のように、費用が必要なタイミングで贈与した場合です。そのため、良い大学に進学して欲しいと考えていても、将来の進学資金を一括で贈与すると贈与税が課せられます。
また、教育資金が必要なタイミングで贈与されても、教育費に充てられない場合は贈与税の課税対象となります。 教育資金を都度贈与する場合は、祖父母が直接学校や塾に払い込んだり、教育資金専用の口座を開設したりして、教育費に充てられたことが明確にわかるようにしましょう。
年間で110万円までの贈与が非課税
贈与税とは、1年間(1月1日〜12月31日)に贈与された金額に対して課せられる税金です。贈与税の計算式は、以下の通りです。
贈与税額
=贈与税の課税対象金額×税率-控除額 贈与税の課税対象金額
=(年間で贈与された他の金額)-基礎控除額(110万円)
※年間とは暦年(1月1日〜12月31日)
このように年間の贈与額が110万円以内であれば、贈与税は課されません。財産を贈与する場合、年間110万円ずつのような一定金額を毎年贈与する暦年贈与がよく利用されます。 例えば、1,000万円を一度に贈与するのではなく、毎年100万円ずつを10年にわたって暦年贈与すると贈与税は課されません。
ただし、毎年100万円ずつ10年にわたって贈与したとしても、最初から1,000万円を贈与する予定だったと判断されると、贈与税の課税対象となってしまいます。 そのため、暦年贈与をする際は、その都度贈与契約書を作成して、贈与をした証跡を残しておきましょう。
教育資金一括贈与の特例制度の利用方法と期限
教育資金一括贈与の特例制度とは
教育資金一括贈与の特例制度とは、30歳未満の子どもや孫に対して教育資金を贈与した場合、贈与された人(受贈者)1人あたり、最大1,500万円までが非課税となる制度です。教育資金一括贈与の特例制度を利用すれば、祖父母は孫のために1,500万円までの教育資金を一括で贈与できます。
特例制度を利用するためには、銀行や信託銀行、証券会社と契約して専用口座を2021年(令和3年)3月末までに開き、教育費として利用したことを証明する領収書を保管する必要があります。払出方法は口座開設時に受贈者が選択できます。領収書等による払出を選択した場合、一時的な立替が必要になります。受贈者が、口座を開いた金融機関に領収証を提出すると、教育資金を引き出せる仕組みです。
金融機関によっては、スマートフォンアプリで領収証を提出できるもの(原本の提出は不要)もあります。口座を開く金融機関を選ぶ際に、確認してみると良いでしょう。
ただし教育資金一括贈与の特例制度は、一度金融機関と契約を結ぶと解約できません。「贈与しすぎたので解約したい」と申し出ても解約できないため、口座を開くかどうかや贈与する金額については慎重に判断しましょう。受贈者の所得が1,000万円を超えている場合は、教育資金一括贈与の特例制度を利用できません。
どこまでが「教育資金」に含まれる?
教育資金一括贈与の特例制度の教育資金とは、「学校教育法で定められた学校等に対して支払われる金銭」のことです。
学校等に直接支払われる金銭
- ①入学金・授業料・入園料・保育料・入学(園)試験の検定料 など
- ②学用品の購入費、修学旅行費や学校給食費のような教育に伴って必要な費用
学校等以外の者に対して直接支払われる金銭のうち、教育を受けるために支払われるものとして社会通念上相当と認められるもの
- ③:学習塾やそろばんなどに支払う月謝、施設の使用料など
- ④:スポーツ(水泳・野球など)、文化芸術(ピアノ・絵画など)その他教養の向上のための活動に係る指導への対価など
- ⑤:③または④で使用する物品の購入費用
※令和元年7月1日以後に支払われる上記③~⑤の金銭で、受贈者が23歳に達した日の翌日以後に支払われるものについては、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限ります。
その他
- ⑥:②に充てるための金銭のうち学校等が必要と認めたもの
- ⑦:通学定期券代や留学のための渡航費などの交通費
※参考:国税庁「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし」
学校等とは、学校教育法で定められた以下のような施設です。
- 幼稚園
- 認定こども園
- 保育所
- 小・中学校
- 高校
- 大学(院)
- 専修学校及び各種学校
- 一定の外国の教育施設 など
非課税の対象となるのは、受贈者1人につき1,500万円までですが、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円までとなる点に注意しましょう。教育資金の範囲の詳細については、文科省のQ&Aで確認できます。
特例制度の注意点
- 教育資金一括贈与の特例制度は、受贈者が30歳に達したときに終了します(受贈者が30歳時点で学校に在籍している場合や教育訓練を受けている場合を除く)。
- 教育資金一括贈与の特例制度を利用しても、場合によっては贈与税がかかります。贈与税が課されるのは、教育資金一括贈与の特例制度の契約が終了した時点での口座残高や教育資金以外で使った金銭です。
- 仮に、終了時に300万円が教育資金口座に残っていた場合、その年の贈与税の課税対象となります。 また、教育資金口座から払い出したお金を、教育資金以外に充てた場合、その年に課税されるのではなく契約が終わったときにまとめて課税されます。
<口座契約が終了する前の3年間毎年100万円ずつを教育資金に使った場合>
使った年に贈与税が課されるのではなく、契約終了時に300万円に対してまとめて課税されます。<孫が30歳になった時点で200万円口座に残っており、契約が終了する過去3年間のうちに教育資金以外で使った金額が400万円であった場合>
68万円の贈与税がかかります。
孫の教育資金をかしこく渡す方法
お孫さんの教育資金を準備する場合、現金を贈与するだけでなく学資保険を活用する方法があります。 学資保険に加入し保険料を最後まで払い込むと、途中で解約したり保険会社が経営破たんしたりしない限りは、支払った保険料以上の満期保険金・お祝い金が受け取れます。
学資保険の保険金が支払われるのは、高校や大学に進学する年齢です。したがって、学資保険を活用することで、生前に教育資金を渡しつつ、お金は進学費用が必要なタイミングで受け取れます。 また、学資保険に加入し、保険料を支払うと生命保険料控除の適用を受けて、所得税や住民税の負担を軽減できる場合があります。学資保険に加入する際は、以下で計算される返戻率を必ず確認しましょう。
返戻率=受け取れる保険金・解約返戻金の総額÷払込保険料の総額
低金利の現在においては、保険料を最後まで払い込んでも返戻率が100%を割ってしまう学資保険は珍しくありません。学資保険を選ぶときは、進学資金が必要なタイミングで受け取れる商品を選び、返戻率を比較してもっとも高いものに加入することが大切です。
祖父母が契約者になって学資保険に加入する
祖父母が契約者となり、孫が被保険者と保険金受取人になって学資保険に加入する方法です。契約者と保険金受取人が別人になるため、受け取る保険金に贈与税が課せられます。したがって、贈与税がかからないようにするには、保険金額を年間110万円以下に抑えて契約する必要があります。
祖父母が保険料を払い込む時点では贈与税は課せられないため、年間で110万円以上の保険料を払い込めます。また、保険会社の定める範囲で保険料を前払い(前納)すると、保険会社が定める利率で保険料が割り引かれます。ただし、祖父母が学資保険の契約者となる場合、親権者の同意が必要です。また、保険会社や商品によっては、祖父母が契約者となって学資保険に加入できない可能性があります。
学資保険では、契約者が死亡、または高度障害状態になったとき、それ以後に保険料の支払いがなくても満期保険金・お祝い金を受け取ることができます(保険料の払込免除特約)。そのため、加入する際に契約者の健康状態を告知する必要があります。よって、祖父母の健康状態によっては加入できないかもしれません。また、契約者が高齢である場合、保険料が割高になり、返戻率が低下する点にも注意が必要です。
親を契約者にして学資保険に加入する
親が契約者となって学資保険を契約し、祖父母から保険料に相当する金額の贈与を受けて保険料を支払う方法です。被保険者を孫、満期保険金の受取人を親とします。
祖父母がご自身の子ども(孫の親)に、保険料支払いのための金銭を非課税で贈与するには、学資保険の保険料は年間で110万円以内にしなければなりません。一方で保険金の受取時に贈与税は課されないため、年間で110万円以上の受取額に設定できます。
長期間にわたってより多くの教育資金を贈与したい場合は、孫に直接現金を贈与するよりも契約者を孫の親にした学資保険に加入すると良いでしょう。親に万が一のことがあった場合でも学費が確保でき、返戻率によっては、支払った保険料の総額よりも多くの額を受け取ることができるためです。祖父母が健康上の理由で学資保険に加入できない場合や、より返戻率を高くしたい場合にも有効な手段です。
ただし、祖父母が資金提供をして親が学資保険に加入する場合、贈与契約書を贈与の都度作成する、口座振込を利用するなど、定期贈与とみなされないように対策をする必要があります。詳しくは、こちらをご覧ください。
また、祖父母が死亡し相続が発生した場合、相続開始前3年以内に相続人が受けた贈与は相続税の課税対象となります。そのため祖父母が亡くなる前3年以内に、保険料を支払うために贈与された財産には相続税が課されるのです。
契約者・被保険者を孫の親、保険金受取人を孫にして終身保険へ加入
もし孫の健康状態に不安があり、学資保険に加入できない可能性がある場合は、祖父母から毎年保険料に相当する金額の贈与を受けて、親が終身保険に加入するのも選択肢の一つです。
終身保険は、一生涯の死亡保障を準備できる保険ですが、一定期間の経過後に解約すると支払った保険料以上の解約返戻金を受け取れる場合があります。
そのため終身保険は、教育資金や老後資金などを準備する際にも活用される保険です。 ただし、終身保険に加入する場合は、保険料の払込期間に注意しましょう。終身保険の保険料を払い込む期間は「10年払」「60歳まで」のように選択する形になります。
※選べる期間は保険会社や商品によって異なります。
保険料の払込期間中に終身保険を解約すると、元本割れする可能性があります。祖父母がどのくらいの期間、いくら贈与できるのか、教育資金がいくら必要なのか、を考えたうえで契約内容を決めることが大切です。
まとめ:教育資金の贈与時は非課税枠や特例制度、生命保険を活用する
孫に教育資金を非課税で贈与する方法には、それぞれにメリットとデメリットがあるため、ご自身の状況に応じた方法を選択することが大切です。 もしご自身にとって適した贈与の方法が分からない方や、保険の活用方法を知りたい方は、当サイトからお金のプロに相談してみてはいかがでしょうか。

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当サイト紹介のファイナンシャルプランナーはお金のプロです。老後資金の悩みをスムーズに解決することをお約束します。
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