「自分たち子どもが、親の介護費用まで準備する必要はあるのだろうか?」と心配や疑問を抱えている方も多いはず。 本記事では、親が要介護状態になった場合に生じる金銭的な負担や、対策すべきトラブルなどを幅広く解説していますので、ぜひご一読ください。
chatこの記事でわかること
ポイント1
介護状態になると、1人あたり500万〜1000万円の介護費用が必要となる可能性がある
介護が必要な状態となった場合、住宅の改修のような初期費用に約69万円、訪問看護・訪問介護の利用といった毎月の費用に約7.8万円かかるというデータがあります。
介護期間は、約4年半です。しかし平均寿命と健康寿命の差から考えると10年近くになる可能性もあります。以上の点を考慮すると、介護費用は合計で500万〜1000万円かかる可能性があるのです。
出典:生命保険文化センターの平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」
ポイント2
親の介護費用を子どもが負担する必要は基本的にないが、事前に家族間で役割分担を話し合う必要がある
親の介護費用は、親自身の資産や年金で賄うのが一般的です。ただし状況によっては、親の資産や年金だけでは足りない場合があります。
また子どもの誰かが親の世話をしなければならないかもしれません。親の介護費用や介護の世話を子どもの誰が行ったかによって、相続で揉めやすくなるため、親が元気なうちに役割分担を話し合っておきましょう。

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介護に必要な費用はいくら?介護に必要な期間は?
親が要介護状態になり、子どもが介護費用を支払う場合、介護期間について心配になるものです。では、平均的な介護期間や介護費用はどれくらいなのでしょうか?それぞれ確認していきましょう。
介護期間
ポイント:介護期間は4年半〜10年になる可能性がある
生命保険文化センターの平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」によると、過去3年間に介護経験がある人の平均介護期間は、54.5ヶ月(約4年半)です。しかし実際の介護期間は、さらに長くなるかもしれません。なぜなら、以下のように平均寿命と健康寿命の差が、男女ともに4年半以上だからです。
男女別の平均寿命と健康寿命
|
男性 |
女性 |
平均寿命 |
80.98歳 |
87.14歳 |
健康寿命 |
72.14歳 |
74.79歳 |
差 |
8.84歳 |
12.35歳 |
※出典:厚生労働省第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会 資料
平均寿命と健康寿命
平均寿命とは、0歳の人が何歳まで生きられるのかを、統計から予測した年齢です。対して健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間です。
よって平均寿命と健康寿命の差は、不健康な状態で日常生活が制限される介護が必要な状態であると解釈できます。そのため介護に必要な期間は、男性で約9年、女性で約12年となる可能性があるのです。
介護費用
生命保険文化センターの調査によると、過去3年間に介護経験がある人が負担した費用の平均は以下の通りです。
過去3年間に介護経験がある人が負担した費用の平均
内容 |
平均額 |
|
初期費用 |
・自宅の改修費用(手すりの設置や段差の解消) ・福祉用具の購入費用(特殊寝台・車椅子・腰掛け便座) |
約69万円 |
月々の介護費用 |
・訪問介護や訪問介護の利用料 ・オムツや防水シーツの購入費用 |
約7.8万円 |
※出典:生命保険文化センター 平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」
介護が必要な期間の平均が54.5ヶ月であることを考えると、(7.8万円×54.5ヶ月)+69万円=494.1万円となります。また平均寿命と健康寿命の差で考えた場合、必要な介護費用は男性と女性で以下の通りです。
男性:(7.8万円×12ヶ月×9年)+69万円=911.4万円
女性:(7.8万円×12ヶ月×12年)+69万円=1192.2万円
このように、介護費用は1人あたり約500万〜1,000万円ほど必要であるとも考えられます。ただし実際の介護費用は、介護サービスを受ける頻度や自宅改修の有無だけでなく、以下のように入居する施設によっても異なります。
入居する施設ごとの入居一時金や月額費用
入居一時金 |
月額費用 |
|
介護老人保健施設 |
不要 |
約8〜14万円 |
特別養護老人ホーム |
不要 |
約6〜15万円 |
介護付き有料老人ホーム |
不要〜数千万円 |
約15〜40万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 |
不要〜数十万円 |
約10〜30万円 |
介護老人保健施設と特別養護老人ホームは公的な施設であるため、入居金は不要で月額費用も低額です。一方で、介護付き有料老人ホームやグループホームでは、施設や入居するお部屋によって入居一時金額や月額費用が変わります。
必要な介護費用を計算するときは、介護状態となった場合に親がどのような生活を送りたいのかも踏まえて考えることが大切です。
介護費用は親の年金で賄い自分の財布からは出さない
基本的には、親の介護資金を子どもが準備する必要はありません。親の介護費用は、親自身の年金や資産で賄うのが一般的です。
ただし親が介護状態になったときに、介護費用の不足分や親の世話を子どもの誰か1人が引き受けることで、トラブルに発展するケースも珍しくありません。そこで親が介護状態となった場合のトラブルや、不利益への対策を解説します。
親が元気なうちに介護の役割分担を決める
ポイント:親が元気なうちに兄弟姉妹の役割分担を決めておくと相続のトラブルを回避できる
親が介護状態になった場合に、子どもの誰が面倒をみるのか、介護費用の不足分を誰が補填するのかを事前に話し合っておきましょう。役割分担を決めておかないと、相続で争う原因となります。
例えば、次男が親の介護をやむを得ず引き受けた場合、遺産相続時に「親の面倒を見たのだから遺産を多くもらいたい」と、他の兄弟姉妹に主張して揉めてしまうことがあります。トラブルを避けるため、親が元気なうちに、介護の役割分担や相続する遺産の分け方について子どもを含む家族全員で話し合っておきましょう。
自分の生活を守りながら介護をする
ポイント:介護休業や介護休業給付金で介護離職を防ぐ
もしご自身が親の介護を担当する場合、介護しつつも自分自身や家族の生活を守るためにも、介護離職は避けなければなりません。そのため親の介護を担当する場合、介護休業制度や介護休業給付金を活用して、仕事を両立していくことが大切です。
介護休業制度を利用する
介護休業制度とは、労働者の家族が介護を要する状態となった場合に取得できる休暇制度です。介護が必要な家族1人につき、通算93日を上限に3回まで取得できます。
また介護休業を取得すると、介護休業給付金を受給して収入の減少に備えられます。勤務先によっては、独自の介護支援制度を実施している場合もあるため、社内規定を確認してみましょう。
親が介護状態になると公的介護保険で費用負担を軽減できる
公的介護保険制度は、寝たきりや認知症など介護が必要になった人が要支援または要介護の認定を受けると、さまざまな介護サービスを利用できる現物給付の制度です。40歳以上の人は、原則として全員が公的介護保険に加入しています。
公的介護保険では、訪問介護のような居宅介護サービスや、特別養護老人ホームまたは介護老人保健施設へ入居できる施設サービスなどが、1〜3割の自己負担で利用できます。
残りの7〜9割の介護費用が公的介護保険から支給されますが、以下のように介護が必要な度合いに応じた支給限度額が設定されており、超過分は全額自己負担となります。
公的介護保険制度の支給限度額
|
支給限度額 |
要支援1 |
50,320円 |
要支援2 |
105,310円 |
要介護1 |
167,650円 |
要介護2 |
197,050円 |
要介護3 |
270,480円 |
要介護4 |
309,380円 |
要介護5 |
362,170円 |
また手すりの設置や段差解消などの住宅改修費用は、住宅1軒につき20万円まで、ポータブルトイレのような特定福祉用具の購入費用は、年間10万円までが支給の対象です。
ただし年齢が40歳以上65歳未満の人は、16種類の特定疾病が原因で介護状態とならなければ、公的介護保険による介護サービスを利用できません。
高額介護サービス費支給制度
ポイント:世帯での介護費用の自己負担が高額になった場合、負担を軽減できる制度
高額介護サービス費制度を利用すると、ひと月(1日〜月末)の介護費用自己負担額が、以下のように定められた上限額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
高額介護サービス費支給制度の自己負担限度額
区分 |
負担の上限額(月額) |
|
現役並みの所得者に相当する人がいる世帯の方 |
44,400円(世帯) |
|
世帯内のどなたかが市町村民税を課税されている方 |
44,400円(世帯) |
|
世帯の全員が市町村民税を課税されていない方 |
24,600円(世帯) |
|
|
前年の合計所得金額と公的年金等収入額の合計が年間で80万円以下の方等 |
24,600円(世帯) 15,000円(個人) |
生活保護を受給している方等 |
15,000円(個人) |
※世帯は住民基本台帳上で判断
例えば、全員が市町村民税を課税されていない夫婦が、ひと月に合計で60,000円の介護費用を自己負担した場合、35,400円(60,000円-24,600円)が払い戻されます。
高額介護合算療養費制度
ポイント:医療費と介護費用の自己負担が高額になった場合の負担軽減制度
高額介護合算療養費制度とは、8月1日から翌年7月末までの間で、自己負担した医療費と介護費の合計額のうち、以下の上限を超過した部分が払い戻される制度です。
高額介護合算療養費制度の自己負担限度額
課税所得 |
年収の目安 |
自己負担上限額 |
|
70歳以上の方だけの世帯 |
70歳未満の人が含まれる世帯 |
||
690万円以上 |
約 1,160万円~ |
212万円 |
212万円 |
380万円以上690万円未満 |
約770万~1,160万円 |
141万円 |
141万円 |
145万円以上380万円未満 |
約370万~770万円 |
67万円 |
67万円 |
145万円未満 |
~約370万円 |
56万円 |
60万円 |
なお住民税非課税世帯の自己負担上限額は、以下の通りです。
・70歳以上の方だけの世帯:31万円
※年金収入80万円以下等は19万円
・70歳未満の人が含まれる世帯:34万円
自己負担した介護費用は医療費控除の対象
医療費控除とは、1月1日から12月31日まで自己負担した医療費の合計額が10万円※を超えた場合に、200万円を限度に超過分が課税所得から控除される制度です。※総所得が200万円未満の場合は、総所得の5%
課税所得とは、所得税や住民税の計算に用いられる所得です。親自身の所得の確定申告で医療費控除を申告すると、所得税や住民税の負担を軽減できる場合があります。医療費控除の対象となる費用の例は、以下の通りです。
・介護老人保健施設や特別養護老人ホームの利用料
・訪問看護や訪問リハビリテーションなどの医療系サービスの利用料
例えば、親の総所得額が200万円を超えており、上記のような介護費用を年間で50万円自己負担した場合、40万円(50万円-10万円)が課税所得から控除されます。
介護費用の自己負担に備える方法
介護費用に不足分が発生する場合は、将来に備えて親に積み立てを始めてもらう必要があります。また、ご自身の将来の介護費用は、自分自身で準備しなければなりません。では、介護費用を貯める方法には、どのようなものがあるのでしょうか?一つずつ確認していきましょう。
預貯金
ポイント:最もリスクの少ない貯蓄方法
貯蓄が得意な方は、預貯金で準備すると良いでしょう。途中で引き出しても元本割れをする可能性は低いですし、介護費用以外の支出にも利用できます。
ただし2020年現在は、低金利の影響もあり口座にお金を預けていてもほとんど殖えません。お金を殖やしたい場合は、預貯金だけでなく他の方法も併用して介護費用を準備しましょう。
貯蓄型保険
ポイント:終身保険や個人年金保険などの貯蓄型保険で介護費用に備えられる
終身保険
終身保険とは、一生涯の死亡保障を得られる保険です。一定期間経過後に解約をすると支払った保険料以上の解約返戻金が受け取れる場合があります。そのため、葬儀費用や死後の整理費用だけでなく、介護費用も含めた老後資金を準備することも可能です。
また保険会社によっては、所定の介護状態に該当すると保険金が支払われる介護保障特約付きの終身保険に加入できます。
個人年金保険
個人年金保険は、保険料を支払って老後の年金を自分自身で準備する保険です。将来受け取れる年金は、「10年」や「15年」もしくは終身にわたって支払われます。
ただし貯蓄型保険は、保険料を支払っている途中で解約すると元本割れする可能性もあります。そのため貯蓄型保険に加入する際は、元本割れしなくなるタイミングを確認し、保険料を最後まで支払っていけるかどうかを入念に検討しましょう。
民間介護保険
民間介護保険とは、所定の介護状態になると介護年金や介護一時金、もしくはその両方が支払われる保険です。公的介護保険とは異なり、現金が支給されます。
民間介護保険で保険金が支払われる条件は、公的介護保険の介護認定に連動している場合や、保険会社が独自に決めている場合があります。また近年は、保険金の支払条件を認知症に限定した認知症保険を取り扱う保険会社も増えてきました。
この保険を利用すれば、公的介護保険の利用で発生する自己負担分をカバーできます。介護費用の自己負担に手厚く備えたい方は、民間介護保険に加入するのも一つの方法です。
リバースモーゲージ
ポイント:自宅を担保に融資を受けられる制度
リバースモーゲージとは、自宅を担保に毎月一定額もしくは一括で融資を受けられる制度です。借入金は、死亡した後に自宅を売却して返済しなければなりません。介護費用を含めた老後資金は、教育資金や住宅購入資金と違って借入による資金準備が難しいです。そのためリバースモゲージは、数少ない老後資金を借り入れで準備できる手段といえます。
ただしリバースモーゲージは、返済時の自宅の価値が、借入時より低下していた場合、借入金の一部を一括で返済しなければなりません。リバースモーゲージを利用するかどうかは、家族と慎重に相談しましょう。
まとめ:親の介護費用は事前の対策が重要
親の介護費用は、基本的に親の資産や年金で支払います。しかし状況によっては、不足分を子どもが負担する可能性もあります。また子どもの誰かが、親の介護を手伝わなければならないケースもあるため、親が元気なうちに役割分担を相談しておかなければ、相続の場面でトラブルになりかねません。
もし介護費用や相続など、お金についての不安や疑問がある方は、一度当サイトからファイナンシャルプランナーに相談してみください。
※本記事は2020年8月現在の公的介護保険制度、税制をもとに作成しており、将来変更される場合があります。

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