受け取った保険金が贈与税の課税対象になると、思わぬ高額な税負担が生じるかもしれません。しかし、どのような場合に贈与税が発生するのか、ご存知ない方も多いのではないでしょうか。 本記事では、保険金に贈与税が課されるケースをわかりやすく解説します。
※この記事は2020年9月現在までに公表されている情報に基づいて作成されたものです。将来予告なく変更されることがあります。
chatこの記事でわかること
ポイント1
死亡保険金や満期保険金、個人年金保険の年金に対しては、契約形態によって贈与税が課される
- 死亡保険金
契約者・被保険者・受取人がすべて別人 - 満期保険金
契約者と受取人が別人 - 個人年金保険の年金
契約者と年金受取人(被保険者)が別人
ポイント2
贈与税は、受け取った死亡保険金や満期保険金などに他の贈与財産を合計した金額に対して課される
- 贈与税額
=贈与税の課税対象金額×税率-控除額 - 贈与税の課税対象金額
=(受け取った満期保険金額+年間で他に贈与された金額)-基礎控除(110万円)
※年間とは暦年(1月1日〜12月31日)

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生命保険に贈与税がかかるケースとは
生命保険に加入し、死亡保険金や満期保険金、年金を受け取った場合に贈与税が課されるケースは以下の通りです。
贈与税が課される契約形態の例
契約者 | |||
---|---|---|---|
(保険料負担者) | 被保険者 | 受取人 | |
死亡保険金 | 夫 | 妻 | 子 |
満期保険金 | 夫 | 夫 | 子 |
年金 | 夫 | 妻 | 妻 |
※被保険者とは保険の対象となる人
このように、保険金や年金が贈与税の課税対象となるのは、契約者と受取人がそれぞれ別の場合です。死亡保険金については、被保険者も含め全て別人でなければなりません。
なお、個人年金保険の契約者と受取人が別人の場合は、年金受取開始時に贈与税が課されます。理由は、年金を受け取る権利(年金受給権)が、契約者(夫)から受取人(妻)に贈与されたとみなされるためです。また、2年目以降は、受け取った年金に対して所得税・住民税が課されます。
保険金にかかる贈与税の計算方法
死亡保険金・満期保険金の贈与税の課税対象金額
死亡保険金や満期保険金に贈与税がかかる場合、課税対象となる金額の計算方法は、以下の通りです。
贈与税の課税対象金額
=(受け取った保険金額+年間で他に贈与された金額)-基礎控除額(110万円)
※年間とは暦年(1月1日〜12月31日)
仮に受け取った保険金額が1,000万円、年間で他に贈与された額が200万円の場合、贈与税の課税対象金額は以下の通りです。
贈与税の課税対象金額
=1,000万円+200万円-110万円 =1090万円
よって、1,090万円に所定の税率がかけられて贈与税が計算されます。受け取った保険金に所得税や住民税が課される場合、課税の対象となる金額を計算するときに払い込んだ保険料の合計が差し引かれます。また、死亡保険金が相続税の課税対象となる場合、死亡保険金の非課税枠や相続税の基礎控除が差し引かれて税額が計算されます。
しかし保険金に贈与税が課される場合、所得税や住民税計算時のように払い込んだ保険料は考慮されません。相続税のような非課税枠も適用されないため、保険金が贈与税の課税対象になると税負担が高額になるケースが多いのです。
個人年金保険の年金は贈与税の課税対象
個人年金保険の契約者が夫、年金受取人が妻のように契約者と年金受取人が別人である場合、年金の受取開始時点に「年金受給権の評価額」に対して贈与税が課されます。受給できる年金の合計金額ではなく、年金を現在の価値に換算し直した金額に対して、贈与税が課される仕組みです。年金受給権の評価額とは、以下のうちいずれか高い金額です。
(1)解約返戻金の額
(2)年金に代えて一時金の給付を受けられる場合は一時金の金額
(3)予定利率等をもとに算出した金額
※予定利率とは、生命保険の保険料の計算等に用いられる基礎率の1つ
参考:生命保険文化センター
仮に(1)が550万円、(2)が560万円、(3)が570万円であった場合、年金受給権の評価額はもっとも高い金額である570万円となります。なお、年金受給権の評価額は、加入先の生命保険会社から送付される「年金受給権評価額証明書」などで確認できます。
贈与税の税率は契約者と受取人の関係によって変わる
贈与税の税率は、2015年(平成27年)以降、以下の2種類に分けられました。
贈与税の税率
- 特例税率
直系尊属(祖父母や父母など)からその年の1月1日において20歳以上の者(子・孫など)への贈与財産について適用される税率。この特例税率の適用がある財産のことを「特例贈与財産」といいます。 - 一般税率
「特例贈与財産用」に該当しない財産に適用される税率(兄弟間の贈与、夫婦間の贈与など)。「一般税率」を適用する財産のことを「一般贈与財産」といいます。
なお、2022年(令和4年)以降、特例贈与の対象となる子や孫の年齢が、20歳以上から18歳以上に引き下げられます。贈与税の税率は、それぞれ以下のとおりです。
【特例贈与財産用】(特例税率)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
【一般贈与財産用(一般税率)】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
では、税率が変わると贈与税額はどれだけ異なるのでしょうか?実際に計算してみましょう。贈与税の対象となる保険金の金額と、他の贈与財産の合計は 800万円であるとします。基礎控除後の課税価格は、690万円(800万円-110万円)です。契約者が父親、保険金の受取人が25歳の子どもであった場合、特例税率が適用されます。よって贈与税の金額は以下の通りです。
贈与税額
=690万円×30%-90万円
=117万円
もし契約者が夫、保険金受取人が妻であった場合、一般税率が適用されて、贈与税額は以下の通りとなります。
贈与税額
=690万円×40%-125万円
=151万円
年間で贈与された金額が同じ800万円でも、税率によって贈与税額に34万円の差が生じる結果となりました。税率の違いによって贈与税額に差が発生するのは、年間の贈与額が410万円を超えた場合です。年間贈与額が高くなるに従って、税率の違いによる贈与税額の差は開いていきます。
生命保険を使って生前贈与する方法
生前贈与とは、保有している財産を、生きているうちに配偶者や子ども、孫に贈与し相続税の課税対象となる財産を減らす行為です。生前に現金を直接わたすだけでなく、生命保険に加入して行われることもあります。
相続税の基礎控除
相続税には、基礎控除「3,000万円 + (600万円×法定相続人)」があります。仮に法定相続人が3人である場合、遺産が合計で4,800万円を超えなければ、相続税は課されません。
配偶者は税額が軽減される
配偶者が遺産を相続する場合、「配偶者の税額軽減」により、実際に取得した遺産の合計金額が1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額を超えないかぎり課税されません。
遺産を相続する人(被相続人)の財産が多い場合、遺産の価値が相続税の基礎控除額を超えることがあります。また、配偶者が遺産を相続する場合、「配偶者の税額軽減」により、実際に取得した遺産の合計金額が、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い額を超えないかぎり課税されません。
したがって、被相続人の保有する財産の価値や誰が遺産を相続するかによって、相続税の負担が高額になる場合があるのです。 生前贈与で財産を死亡する前に贈与しておき、相続税の課税対象となる財産を減らすことで、高額な税負担を避けられます。
生前贈与では暦年贈与が活用される
贈与税の基礎控除額である110万円を活用し、財産を贈与する方法が暦年贈与です。 例えば、2,000万円の財産を贈与する場合、一括で贈与してしまうと、695万円の贈与税が発生します。
※特例贈与財産に該当する場合の相続税は585万円
しかし、毎年200万円ずつ10年間贈与すると、贈与税額は一般贈与の場合も特例贈与の場合も合計90万円で済みます。さらに、毎年100万円ずつ2人に贈与すると、贈与税の基礎控除である110万円以下であるため税金はかかりません。このように、財産を贈与税の基礎控除の範囲内で贈与すると、贈与税を負担することなく相続税の課税対象となる財産を減らせるのです。
暦年贈与をする際の注意点
毎年贈与する場合、各年の贈与額が110万円以下であっても贈与税が課される可能性があります。例えば、毎年110万円ずつ10年間にわたって贈与するという約束をした場合は、贈与を約束した年に、10年間にわたり毎年110万円ずつ受け取れる権利(定期金に関する権利)が贈与されたとして、1,100万円にまとめて贈与税がかかります。
そのため、暦年贈与をする場合は、贈与の度に贈与契約書を作成し書類として証拠を残しましょう。また、贈与するときは現金ではなく、財産を贈与する人の口座から贈与を受ける人の口座に振り込みをします。
生前贈与に生命保険の活用が有効な理由
生前贈与として、子どもに現金を毎年110万円ずつ贈与すると、「無駄遣いをしてしまうのではないか」と心配される方も少なくありません。そこで、終身保険や個人年金保険を活用して生前贈与を行う方法(保険料贈与プラン)があります。
例えば、終身保険(一生涯の死亡保障が得られる保険)に以下のような契約形態で加入します。
- 契約者(保険料を負担する人):子
- 被保険者:父親
- 受取人:子
ポイントは子どもが契約者となり、父親から保険料に相当する金額の贈与を受け、保険料を支払う点です。まず父親が贈与したお金で子どもが保険料を支払うと、解約しない限り贈与されたお金は引き出せません。解約すると元本割れする可能性もあるため、子どもは贈与されたお金を引き出しづらくなります。また、保険金額が高額な場合、子どもを契約者にした方が税負担を少なくできることがあります。
死亡保険金を一時所得扱いにして節税する
死亡保険金は、父親が契約者の場合は相続税の課税対象ですが、子どもが契約者の場合は一時所得として、所得税や住民税の課税対象となります。
その場合、所得税や住民税の課税対象となるのは、保険金額から払込保険料と特別控除額(50万円)が差し引かれた金額(一時所得)の半額です。よって保険金額が高額である場合、所得税や住民税が課されるような契約形態にしていた方が税負担を少なくできる可能性があるのです。
ただし、生命保険の活用方法は、相続予定の財産額や相続人の数などによって異なります。生前贈与ではなく契約者を親にして生命保険に加入し、死亡保険金の非課税枠を利用するのも、よく行われる相続対策ですので、ご自身の状況に合った選択をしましょう。
保険料贈与プランの注意点
- 保険料を贈与する度に、贈与契約書を作成すること
- 保険料に相当する金額は贈与者(父)から贈与を受けた人(子)の口座へ振り込むこと
- 保険料は、贈与を受けた人(子)の口座から引き落とすこと
- 贈与者(父親)は生命保険料控除を受けないこと
まとめ:税負担を抑えるためには贈与税と生命保険の関係を理解しよう
死亡保険金や満期保険金に贈与税が課されると、相続税や所得税が課されるときよりも税負担が高額になる場合があります。
一方で、贈与税の非課税枠を活用して財産を生前に贈与すると、相続財産を減らすことで相続税の額を抑えられる場合もあるのです。 生命保険にかかる税金や、生命保険を活用した生前贈与について、より深く知りたい方は、当サイトからプロに相談してみてください。

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